声は人の印象を左右する。意外に知らないのどの話

特集/のど、いたわってますか?

先生/渡邊雄介(山王病院 国際医療福祉大学東京ボイスセンター長)

---- 長引くコロナ禍により、私たちの生活スタイルは大きく変化しました。なかでもめっきり減ったのが、おしゃべりなどの「声を出す」こと。感染予防のためにマスクをして、会話は最小限。時にはステイホームやリモート勤務で1日中誰とも話さないという日も。思った以上に「声を出す」機会が少なくなっているなかで、「のど」と「声」の健康について考えてみましょう。音声の専門医として一般の患者さんはもちろん、音楽家からの信頼も厚い、山王病院 国際医療福祉大学東京ボイスセンター長の渡邊雄介先生にうかがいました。

声は人の印象も左右する!? 意外に知らないのどの話

声がおかしい…。さて、何科の病院に行く?

もし、あなたが、「声が出しにくい」「声がとぎれる」「声がかすれる」など、声に関する不調を感じてお医者さんに診てもらおうと思ったら、どの病院に行きますか? 内科? 耳鼻咽喉科? それとも心療内科でしょうか?

実は私自身、学生時代、歌を歌っていて、声の調子が悪いので病院にかかろうと思ったけれど何科かわからなくて、とりあえず内科に行った経験があります。医学部生なのにわからなかった。そもそも、声のことは、医学部でもあまり学ばないのです。

そして、「声」を出す器官である「のど」の専門医は、日本全国でも非常に少ない。一般的には、耳鼻咽喉科を標榜していると、「耳」も「鼻」も「のど」も全部診てくれるだろうと思われがちですが、実際は、それぞれ専門が分かれているんです。

声の不調は、ほとんどが、命に即関わることではありません。そのため、声の仕事をしている人でもなければ、不調を放っておいたり、改善することをあきらめたりすることも多いのが実情です。しかし、「声が出しにくい」という状態はコミュニケーションを阻害し、生活の質を確実に下げます。また、そこに大きな病気が隠れていることもあります。まずは、ご自身の声の状態に関心をもつこと、そして「のど」にも専門医がいることを知っていただければと思います。

「あー」と声を出してのどの状態をチェック!

「のど」には、声を出すという「発声」以外に、「呼吸」と「嚥下(えんげ)」という役割もあります。さまざまな原因でのどが弱っていくと、声が出にくくなるだけでなく、呼吸が苦しくなったり、食べ物を飲み込みづらくなったりと、最終的には命に関わることに発展していく可能性もあります。のどを健やかに保つことは、健康寿命を伸ばすことにもつながるのです。

のどの状態をチェックする簡単な方法があります。私たちは「あーテスト」と呼んでいますが、「あー」と声に出して、何秒続けられるかというテストです。

息を深く吸った後で、「あー」と声を出します。高すぎず低すぎず、楽に出せる大きさの声で大丈夫です。女性なら20秒以上、男性なら25秒以上で合格です。15秒続かない場合は、発声器官に何らかの異常が起きていると考えられます。10秒も続かないという人は、のどの病気の可能性が非常に高いので、専門医を受診することをおすすめします。

ほかにも、「相手から聞き返されることが増えた」「オンラインでの会話が伝わりづらい」「高い声が出なくなった」なども、のどの不調の表れです。病気だけではなく、加齢などによる筋力の衰えも、声が出にくくなる原因になります。

そして、のどの筋肉は、鍛えることができます。声を出すための筋肉「声筋」を鍛えれば、声は改善します。世の中にはいろんな楽器があり、同じ「ド」の音階を出しても、音の印象は全部違いますよね? そして、きちんとチューンアップすれば、それぞれの音は美しくなりますよね。それと同じで、人間の「声」も、それぞれ、よい状態にチューンアップできるんです。

声は、人の印象も左右します。「メラビアンの法則」というのがあって、人と人とがコミュニケーションを図る際に影響を与えるのは、見た目などの視覚情報が55%、その次が声のトーンなどの聴覚情報で38%、残りの7%が会話の内容など言語情報だといわれています。みなさん、お化粧やファッションなど視覚情報に力を注いでいらっしゃいますが、ぜひ、声にも関心をもっていただきたい。声を磨けば、人生も豊かになると思いますよ。

----声を出したり、会話をしたり。ふだん特に意識することなくやっていることだからこそ、ケアが疎かになりがち。まずは自分の声に関心をもち、のどの状態を知りましょう。次回は、声を出すための「声筋」について、その仕組みや働きを教えていただきます。

取材・文/剣持亜弥
イラスト/坂田優子
デザイン/WATARIGRAPHIC
  • 渡邊雄介
  • 渡邊雄介 山王病院 国際医療福祉大学東京ボイスセンター長、国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授、東京大学医科学研究所附属病院非常勤講師。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。音声の専門医として、一般からプロフェッショナルまで幅広い支持を得る。
    メディアへの出演も多く、わかりやすく丁寧な解説と実践的なエクササイズの紹介が好評。著書に『マスクをするなら「声筋」を鍛えなさい』『専門医が教える 声が出にくくなったら読む本』『声の専門医だから知っている 声筋のすごい力』『フケ声がいやなら「声筋」を鍛えなさい』がある。

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