進化を続ける「乳がん検診」最新事情

特集/美胸の保ち方

先生/島田菜穂子(ピンクリボン ブレストケア クリニック表参道 院長)

---- 乳房を健やかに保つために、私たちができることはなんでしょうか。セルフチェックでふだんの乳房の状態を把握しておくこと。そして定期的に検診を受けること――。マンモグラフィや超音波検査の技術は、近年、大きな進化を遂げています。乳がん検診の最新事情について、ブレストケアの専門家である島田菜穂子先生にうかがいました。

進化を続ける「乳がん検診」最新事情

早く見つけて、早く治す。乳がんとの闘いは先手必勝

乳房に対する関心は、年齢によって変化していきます。私のクリニックでも、10代〜20代の方からよく質問を受けるのは、大きさや形のこと。30代後半からのプレ更年期以降は、体調不良をきっかけに、「乳房にしこりがあるのですが…」といった、病気への心配が増えてきます。著名人の乳がん罹患(りかん)のニュースが発表されると、一時的に関心が高まることも多いですね。

どのくらいの頻度で乳がん検診を行うべきかは、その人の年齢や、リスクファクターによって変わってきます。一般的には、乳がんになることが稀な10代はセルフチェックをメインに、乳房をケアする習慣をつくることが大事。20代では、家族に乳がんになった人がいる「家族歴」が濃厚な人は、やや若くして乳がんになりやすい傾向があるので、早めの乳がん健診スタートが大事。また、ホルモン剤を使う予定のある人はその前に検診を。そして、乳がんの発生率が上がる30代後半からは、1年に1回は医療機関での画像診断を加えた乳がん健診を受けるようにしてほしいですね。

手で触れてわかるしこりは、だいたい2cmくらいから。でも、マンモグラフィ(乳房X線撮影)や超音波なら、2〜3mmくらいの段階で発見することができます。「自分だけは大丈夫」ということは絶対にありません。乳がんとの闘いは、乳がんになる前から始まっているのです。

医師+技師+検査機器がそろった質の高い検診を

まずは、月に1回のセルフチェックを習慣づけましょう。月経が始まって5〜7日目の、乳房がやわらかく安定している時期に行います。鏡の前に立って乳房を見て、右左違うところはないか、皮膚の色や状態はどうか、乳首がただれていたり、ひきつっていたりしていないか、乳首をつまんで分泌がないか、などを確認します。

さらに、入浴時には乳房を触ってチェック。そろえた指を“の”の字を書くように動かしながら、乳房全体を、腋(わき)の下のほうまでくまなく触ります。しこりや部分的に硬いところがないかどうかを確認してください。

医療機関での乳がん検診では、触診だけでなく、マンモグラフィや超音波などの画像検査を受けることが大切。特にマンモグラフィは、3Dマンモグラフィが普及し始め、より検出率が上がっています。X線の被爆量も減らせるようになってきました。

マンモグラフィは、乳房を透明な板状のもので挟み、薄く引き延ばしますが、それが痛くて怖い、という声もよく聞きます。実は、技師にも上手な人とそうでもない人がいて、痛みもずいぶん違うんです。画像診断についても、経験やスキルにどうしても差があります。

できれば、乳腺の専門医がいて、試験やトレーニングを受けている診療放射線技師と、適切な検査機器があり、乳がん認定試験を受けているクリニックで、検査を受けましょう。この3つの安全がそろった医療機関は、「認定NPO法人 乳房健康研究会」のサイト内にある「検査設備の整った施設リスト」で探すことができます。せっかく時間とお金をかけて検査を受けるのですから、医師と技師と検査機器がそろった、甲斐がある検査にしたいものです。そしてぜひ、乳房についても、専門のかかりつけ医をもってほしいと思います。

自分自身の乳房を慈しみ、思いを寄せる。それが「ブレストケア」です。「ここにいますよ!」という乳房の声に、耳を傾けてあげてください。

----健康診断で「要再検査」になってから、お医者さんを探したことがある人も多いのでは? ふだんから乳房の状態をよくわかってくれている、かかりつけの乳腺専門医をもっていれば、心強いですね。美しく健やかなバストのための「ブレストケア」、さっそく今日から始めましょう!

取材・文/剣持亜弥
  • 島田菜穂子
  • 島田菜穂子 ピンクリボン ブレストケア クリニック表参道 院長。認定NPO法人乳房健康研究会 副理事長。放射線科診断医として勤務後、1992年、東京逓信病院に乳腺外来を開設。1998年より日本放射線科専門医会海外留学フェローシップに選考され、米国ワシントン大学メディカルセンターブレストヘルスセンターに留学。帰国後、2000年に乳癌啓発団体「乳房健康研究会」を発足し、同副理事長に就任。ピンクリボン運動、イベント出版活動展開、調査研究を通じて乳がん検診の環境整備のためのロビーイングを開始する。2008年に「ピンクリボン ブレストケア クリニック表参道」開設。