日々の暮らしに、脳が喜ぶアクセントを

特集/ブレインヘルスの最新事情

先生/広川慶裕(認知症予防医・ひろかわクリニック院長)

---- からだを動かすことや食材など、脳の「好きなこと」についてうかがってきましたが、最終回は「脳が喜ぶ」行動について。運動や食事と同じく、簡単で、毎日続けられる、ちょっとした、でも効果の高いアクションを、認知症予防を専門とする精神科医の広川先生に教えていただきます。

日々の暮らしに、脳が喜ぶアクセントを

「怠け者」の脳は
いつもと違うことが好き

からだを動かして脳が十分に活動するための環境を整え、適切な食生活で脳にエネルギーを潤沢に供給したら、いよいよ脳内のネットワークを強化していきましょう。ここでも、大切なのは「続けること」。とりたてて時間をもうけるというよりは、ふだんの生活の中でできる、「脳にいい」行動をご紹介します。

まずは、脳の特性を理解しましょう。脳は「怠け者」で「飽きっぽい」、でも「新しモノ好き」です。

前回お話ししたとおり、脳は、活動するのに非常に大きなエネルギーを必要とします。だから、省エネのために、すぐにさぼろうとします。毎日通っている道に、ある日、突然空き地ができていて、「あれ、ここに何が建ってたんだっけ?」となった経験はありませんか? 脳が、認識することをさぼっていたのです。

そんな脳は、ふだんの行動からちょっと「ずらした」動きをすると、それをとても新鮮に感じて、喜びます。たとえば、こんな認知症トレーニングがあります。まず両手を開いて、(左右両方いっしょに)親指から順番に→人差し指→中指→薬指→小指...と折り曲げていき、続けて小指から順に親指まで開いていきます。次に、「ずらした」パターンに挑戦します。右手の親指を折った状態からスタート。順に指を折っていくのは、右手人差し指&左手親指→右手中指&左手人差し指→右手薬指&左手中指...と、左右で「ずれた」指を同時に折っていくのです。折ったら、同じようにして小指側から開いていきます。たったこれだけのことで、脳は必死になるのです。

行ったことのない場所に行く、いつもは車で行く場所に電車で行ってみるなど、ちょっとした変化に、脳は反応します。料理もいいですね。冷蔵庫の中を見て献立を考えたり、調理法を工夫したりという、毎日することなんだけど、変化がある、というのは、究極の認知症トレーニングといえます。

今こそ大切にしたいのは
顔を合わせて話すこと

人とのコミュニケーションも、脳に刺激を与えます。脳のためには、気分を同調させて頭を働かせる対人コミュニケーションはとても重要なのです。しかし、インターネットの普及で、顔を合わせなくてもコミュニケーションが成立する時代では、社会全体が認知症に向かっているようで、心配です。新しい人との出会いやコミュニケーションの機会を、意識してつくるようにするとよいと思います。

同時に、よく知っている人や場所に対して感じる「なじみの感覚」というのも、脳にとっては大切です。特に認知症を発症した人は、記憶という、自分を形づくっていたものがどんどん消えていくわけで、いかに「なじみの感覚」をつくっていくかが治療のひとつのポイントになります。だから、会社に行って仲間と仕事をし、取引先と折衝をする、という日常は、脳にとっては「なじみの感覚」と「新しい刺激」の両方が得られる、とてもよい状況だといえます。

機能の衰えは誰にでも訪れる、ある意味仕方のないことではあります。しかし、運動や食事、日々の行動など、ちょっとしたことを改善し、継続することで、10年後・20年後の状態は確実に違ってきます。人生100年時代、できるだけ長く健康でいたいもの。ぜひ、脳の健康を意識した生活を送っていただきたいと思います。

----脳を健やかに保つのは、案外、身近で小さなことの積み重ね。「怠け者」で「新しモノ好き」な脳を、上手に喜ばせて働かせ、生き生きとした人生を送りましょう!

  • 広川慶裕
  • 広川慶裕 精神科医。認知症予防医として認知症やうつ病、統合失調症などの精神疾患治療に携わる。メンタル産業医でもあり、働く人のメンタルヘルスにも関わっている。認知症予防専門クリニック「ひろかわクリニック(宇治駅前MCIクリニック)」、「脳とこころの健康相談室(品川駅前MCI相談室)」院長。著書に『認知症の危険度がわかる自己診断テスト』『もの忘れ・認知症が心配になったら読む本』『認知症は予防できる!』『「認トレ®」で防ぐ認知症―完全4週間メソッド』などがある。 HP:http://www.j-mci.com
取材・文/剣持亜弥
イラスト/吉岡ゆうこ
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