「疲れず」「美しい」からだの秘密

特集/目覚めよ体幹!

先生/安田登(下掛宝生流能楽師、
全米Rolf institute公認ロルファー)

----能や歌舞伎といった伝統芸能は、生涯現役の世界。70歳、80歳になっても舞台に立つことができるのは、特別なトレーニングをしているからだと思いきや......。「健康に気を遣っていないのに、なぜ能楽師は元気なんだろう? その理由は、体幹(コア)をうまく使っているから」と話すのは、国内外で舞台をつとめるかたわら、能のワークショップも行う安田登先生。コアを活性化することで、どんなからだが手に入るのか聞いてみました。

能楽師は無意識に深層筋を活性化している

筋肉はいくつかの層になっていますが、もっとも奥にあるのが体幹深層筋(コア)です。ウエイトトレーニングで鍛えやすい体幹表層筋とは異なり、体幹深層筋は奥にあるため意識するのが難しい。意識できない筋肉は鍛えにくいが、活性化させること、使えるようにすることは、できます。

能とは違う視点からからだの使い方を学びたいと思っていたときに、深層筋の動きを重視した「ロルフィング」というアメリカ発祥のボディワークに出合いました。ロルフィングの考え方を通して能を見たときに、能楽師の動きは深層筋を活性化させていることに気づいたのです。テレビ番組で私と先輩能楽師の大腰筋(深層筋のひとつ)を測定してもらったことがあるのですが、当時50代だった私は20代、70代だった先輩は30代の筋肉でした。能は深層筋によって生み出される姿勢・動き・発声によって舞うもの。だから特別なトレーニングをしなくても、日々の稽古だけで活性化することができるのです。

活性化する前に、まずは"ゆるめる"

今、引きこもりの人たちと奥の細道を歩くワークショップを開催しているのですが、引きこもりの年数と比例して足の筋肉は当然衰えています。そんな人たちが1日8時間、10日間歩くなんて無理だと思いますよね。でも、大腰筋を使って歩く方法を習得すると、長時間歩くことが可能に。なぜかというと、深層筋が使えるようになると表層筋を使わなくなるので、ムダなエネルギー消費を抑えることができるのです。日常生活で8時間歩くことはありませんが、立ち仕事の人は深層筋を使って立つと疲れにくくなるはずです。

深層筋を活性化することで姿勢もよくなります。姿勢は美しさの基本。どんなにスタイルがよくても、姿勢が悪いと美しさが半減してしまいますから。肩甲骨の前側から肋骨についている小胸筋(深層筋のひとつ)が緊張すると、肩の上部が前側に引っ張られるため猫背になるのですが、美しい姿勢をキープするためには、活性化する前に小胸筋をゆるめる必要があります。活性化させるほうがより早く効果が出ると思いがちですが、ブレーキを握りながら一生懸命自転車を漕いでもスピードが出ないように、スピードを上げるにはまず、ブレーキをゆるめることが先なのです。

----マッサージやエステで「からだの力を抜いてください」と言われ、抜いているつもりが全然抜けていないという経験、ありませんか? 私たちは活性化する方法ばかりに目がいきがちで、ゆるめることはおざなりにしがち。次回は、ゆるめ方をご紹介します。
安田登

安田登 下掛宝生流能楽師、全米Rolf institute公認ロルファー。国内外で多くの舞台をつとめるかたわら、学校やカルチャーセンターなどで能のワークショップを行う。主な著書に『疲れない体をつくる「和」の身体作法』(祥伝社黄金文庫)、『身体能力を高める「和の所作」』(ちくま文庫)などがある。
http://www.watowa.net

取材・文/山崎潤子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ

※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
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からだ用語辞典: 体幹(コア) / 大腰筋 / 小胸筋 / 肩甲骨

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