インナーマッスルが働く『美しい姿勢』を覚える

特集/姿勢に自信ありますか?

先生/森谷敏夫(京都大学大学院 人間・環境研究科教授)
取材・文/大庭典子(ライター)

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壁を使って、立ち姿をチェック!

背中を丸めたり、骨盤が寝ているなど、一見ラクな体勢が、やがてはからだの不調を引き起こすことがわかりました。今回は、姿勢と歩行の関係やインナーマッスルを鍛えるためのエクササイズを教えてもらいました。引き続き京都大学の森谷教授にご登場いただきます。

前回から1週間たちますが、座り姿勢のポイントは覚えましたか? 最初はキツく感じるかもしれませんが、頑張ってください。さて、今回は立ち姿勢について。まずは、自分の立っているときの姿勢について、チェックをしてみましょう。 Image 壁に沿って立ってください。頭、肩甲骨、お尻、かかとは一直線になっていますか? 4か所を壁に付けて違和感のあるところはありませんか? 壁に付くけれども違和感がある...という人は、ふだん、その部分が前に出ているということ。姿勢に問題アリです。お尻が壁に付かない人は、おなかが前に出ているはずですよ。 Image 一般的に、よい姿勢とは横から見たときに上の図左のように頭、肩、骨盤、ひざ、かかとの5つのポイントが一直線になっていることをさします。このポイントがズレてしまうと...右の図のように、姿勢が崩れてしまいます。立ち姿の姿勢を美しくするには、5つのポイントが直線になることを意識しましょう。

座り姿勢同様、このときも重要なのは、ヘソ下の高さにあるインナーマッスル。立っているときにもヘソ下の高さにある前後の筋肉を骨に向けて押し当てるよう意識してください。

姿勢を正すということは、言い換えると、"インナーマッスルが働くポジションに姿勢をもってくる"ことでもあります。きれいな姿勢に変える、その体勢を維持することは、インナーマッスルの強化につながるのです。インナーマッスルが強くなれば、正しい姿勢でいることがラクになるはずです。いくつかエクササイズもご紹介しましょう。 Image 上のイラストのような姿勢で、5〜10秒キープ。キツかったら、2〜3秒から始めてもOKです。この体勢は、脊柱を正しい位置にする筋肉を強くします。

正しい姿勢で、見た目の美しさだけでなく、からだの機能もアップ!

姿勢が悪いままの状態でいると、インナーマッスルが衰えてしまうことはわかりましたね。その衰えは、"歩行"にも影響が。インナーマッスルが弱いと、歩く際の推進力が低下して、歩行スピードが落ちてしまうのです。歩くスピードが落ちるくらい...と思うかもしれませんが、これはあなどれません。

アメリカで行われた研究で、歩行スピードと生存率には深い関係があることがわかっています。(The Journal of the American Medical Association 2011より)。歩行スピードが速い人は、高齢になっても生存率が高いという研究結果が出ています。

人間のからだのシステムは、直列なので、電池と同じで、1か所に弱いところがあれば、必ず機能や能力は落ちてしまいます。それが歩くスピードとなって現れるのです。

姿勢を正しく保つことは、見た目の美しさをつくるだけでなく、からだの機能を高める効果もあるのです。そう思えば、エクササイズのやる気も出てきますよね。

では最後に。正しい姿勢で座ること、立つこと、またインナーマッスルのトレーニングは、下腹の出っ張りなどにも効果があるはずだと何度もお伝えしました。が、インナーマッスルの筋肉より内側にあるぽっこりを減少させることはできても、筋肉よりも外側の"皮下脂肪"によるぽっこりは隠すことができませんので、あしからず(笑)」

つい、すべてのぽっこりが解消するのかと...(笑)。そんなワケはありませんね。
美しい見た目、そして健康寿命を伸ばすためにも、毎日の姿勢には気をつけたいですね。壁での立ち姿チェックは気軽にできるので、マメに行いましょう。
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森谷敏夫
(京都大学大学院 人間・環境研究科教授)
南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、PhD)。テキサス農工大学大学院助教授、カロリンスカ医学研究所客員研究員(スウェーデン政府給費留学)などを経て、2000年より現職。専門は、応用生理学とスポーツ医学。60歳を超える今も、体脂肪率は驚異の9.8%。明朗快活な人柄も人気でおもしろく、ためになる講義は大盛況。著書に『メタボにならない脳のつくり方』(扶桑社新書)、『ダイエットを科学する』(ディジタルアーカイブズ)など多数。

イラスト/楽谷玲子