美しい姿勢とは?

特集/姿勢に自信ありますか?

先生/山口光國(理学療法士)
取材・文/大庭典子(ライター)

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パッと見姿勢美人! でも動くとガッカリ...

美しさ、女っぷりを大きく左右する姿勢。私たちが思い浮かべる姿勢のいい人というと、背筋がしゃんと伸びている人。逆に姿勢の悪い人といってイメージするのは、背中が丸まった人。

...もちろんそれも正しいのですが、今回、理学療法士の山口先生に取材していくなかで、姿勢とはそんなに単純なものではなく、かなり奥深い世界だということがわかりました。まずは、姿勢をつくるポイントについて教えていただきました。

「姿勢を考えるうえで、大きなポイントはふたつ。それは"骨の配列"と筋肉や脂肪などの軟部組織の"重さのバランス"です。重さのバランスとひとことで言っても、筋肉や脂肪の量、つく位置などは年齢や生活スタイルで変わってきますので、それに伴い姿勢も変化していきます。

上半身で重さのある部位といえばバスト。バストの位置で姿勢は変わります。ワコールの"胸がどの位置にあると姿勢は美しく見えるのか"という調査結果と私の検証から、"上半身の質量中心点と胸のトップが一致する"と美しく見えることがわかったのです。

上半身の質量中心点とは、図でいう第7胸椎のあたりです。この高さに胸のトップがあると、背筋も伸び、姿勢は美しく見えるのです。

自分で確認する場合は、ウエストのくびれと肩先の間の真ん中、あるいは、肘を90度に曲げ、肘先と肩先の中間にトップがあるかチェックします。 Image ところが、加齢で胸の位置が下がってきたり、筋肉が減ってくると、重さのバランスが変わります。からだは重さのバランスに合わせて、一番ラクな姿勢を取ろうとするので、少しずつ骨の位置も変わり、"骨の配列"と"重さのバランス"が崩れ、姿勢が曲がってしまうのです。

"静"と"動"の姿勢が整ってこそ、姿勢美人!

ところで、"いい姿勢"っていったい何でしょうか。もしかしたらみなさんは、止まっているときの姿勢、人に見られているときの姿勢だけを指して「あの人は姿勢がいい」とか「あの人は姿勢が悪い」などと判断しているのではないでしょうか。そして、自らも静止時の姿勢だけをよくする努力をしているとしたら...それは少しギモンなのです。

私は、姿勢には2種類あると考えています。ひとつは"静止時の姿勢"。もうひとつは、"動いているときの姿勢"。さまざまな雑誌などで、"いい姿勢"についての特集が組まれていますが、"静止時の姿勢"についてのみ検証することがほとんどです。

静止時の姿勢がいい人が、動きの姿勢もいいとは限らず、なかには静止時は完璧だけれども、動きの姿勢は最悪...なんて人もいます。

動きの姿勢を整えることは、つまり目的の動作にスムーズに動けるということ。
試しに、体育座りの状態で手で膝を抱えて、コロンと転がってみてください。ゆりかごのように"後ろに転がって→また戻って来る"の動きができますか?
転がったはいいけれど戻って来られないという人、要注意。"動"の姿勢が悪いかもしれません。

世の中で姿勢のいい人の代表といえば、モデルさん。もちろん立ち姿の姿勢は言うことなしなのですが、ずっと一定方向に背筋を伸ばしっぱなしの彼女たちのなかにはこのゆりかごの動きがまったくできない人もいます。

立ち姿がきれい=いい姿勢、ではないのです。次回は、"動の姿勢"の美しさについて、さらに詳しく解説をしていきましょう」

ゆりかご、できましたか?(意外とキツいですよね)。姿勢と言えば、シルエットや立ち姿を表すものだと思い込んでいました。姿勢には2種類あって、しかもそれは"静"と"動"という真逆のもの...。両方が美しくあってこその姿勢美人なのですね。次回は"動"に焦点をあててお話いただきます。
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山口光國
(セラ・ラボ代表/理学療法士)
日本サッカーリーグの日立製作所(現 柏レイソルズ)にFWとして入団。故障から21歳で引退し、現職へ転身。昭和大学藤が丘リハビリテーション病院を経て、'05年より横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)にフィジカルコーチとして就任。現在は、さまざまなジャンルのアスリートをサポートするほか、全国各地で講演、セミナー活動も行う。

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