ハイヒールにつま先からSOS!

特集/あなたの足、大丈夫?

先生/阿部 薫(新潟医療福祉大学 教授
義肢装具士 博士)
取材・文/大庭典子(ライター)

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家事にも最適!2cmヒールがラクな理由とは?!

「おしゃれは足元から」なんて言葉もあるくらい、ファッションを楽しむうえで靴の存在は欠かせないもの。今回は、ヒールの高さと足の関係について、引き続き阿部薫先生にお伺いします。

「靴は、足の保護をする役割があると同時に、靴を見ればその人の暮らしがわかるというくらいステイタスシンボルであり、ファッションアイテムでもあります。ですから、靴には機能美が求められるのです。

女性のおしゃれに欠かせないヒールについて考えてみましょう。ヒールを履くと脚がきれいに見えるのはなぜか?その理由は、ヒールを履くと下腿三頭筋というふくらはぎの筋肉が収縮するのですが、それによってふくらはぎの中央のふくらんだ部分がきゅっと上がるのです。それによって、足首が細く、脚全体がきれいに見えるのです。ただし、この時、筋肉はずっと緊張した状態にあります。

では、ヒールの高さによって、体重のかかり方はどう変動するのか見てみましょう。

一般的な靴のヒールの高さと体重のかかり方
◆ヒールなし つま先4:かかと6
◆2cm    つま先5:かかと5
◆4cm    つま先6:かかと4
◆6cm    つま先7.5:かかと2.5

これを見てわかるように、ヒールなしの状態は、体重はややかかと側にかかっています。2cmでちょうど半々のバランスのいい状態。家で家事を行うときなど、2cmくらいのウェッジソール付きスリッパを履いていると、ラクに動作ができますよ。そして4cmで比重は逆転。つま先側に体重が乗ります。6cmになると、つま先に体重の4分の3が乗っていることになります。

このように高いヒールを履き続けていると、つま先に集中的に体重がかかり、前回にお伝えした"横アーチ"がつぶれてしまうのです。さらに、ヒールが高くなればなるほど、足裏の接地面積は少なくなるうえに、支える体重は増える......。足裏が痛くなるのも無理はありません。

ヒールの高い靴でもウェッジソールのものやヒールの位置に工夫がされたものは、体重のかかり方も分散され、つま先にかかりすぎず、快適に感じるはずです。

妊娠中は、外反母趾改善のチャンス!?

足に重要な3つのアーチの「つぶれやすい」「つぶれにくい」には、個人差があります。高いヒールを履いていても外反母趾にならない人がいれば、ヒールを履かないのに外反母趾になる人もいます。これはじん帯の強さに関係があるのです。じん帯は骨と骨をつなぐ連結パーツです。じん帯がやわらかい人はアーチがつぶれやすく、じん帯が強い人はアーチがつぶれにくい。ただし、そこには遺伝的な要素も影響していますし、じん帯は筋肉のように鍛えることができません。

女性には、特にじん帯が劇的にゆるむ時期があります。それは、妊娠中。妊娠期の女性のからだは、女性ホルモンを多く出すことで結合組織をやわらかくし、10か月かけて少しずつ骨盤を開いていきます。ただしホルモンは液体なので、血液に溶けて全身くまなく巡ります。骨盤だけに届くのではなく、血液が巡る先々の結合組織をやわらかくし、ゆるめてしまうのです。手をついただけで肩が外れてしまったり、腰痛に悩まされるのもこのため。

足にももちろん影響はあり、結合組織がゆるむこの時期に扁平足になってしまう妊婦さんも少なくありません。ただし、このピンチは足のリフォームの大チャンスなんです! 結合組織がゆるんでいるということは、形が変化しやすいということ。この時期にインソールを使って、3つのアーチを立て直すことをおすすめします。実は、外反母趾の妊婦さん80人にインソールを試した結果、100%の人が足の負担が軽減されたそうです。骨格の剛性がゆるむピークは9か月目。この時期をぜひ活用してください。

妊娠期の靴についてもうひとつ。ペタンコのやわらかい靴を履いたほうがいいと思われがちですが、さきほどお伝えした通り、0cmヒールのときは、かかと側に体重が乗っています。お腹が大きい状態では、かかとから着地するタイミングがワンテンポ遅れ、このときに重心がさらにかかと側に乗ってくるので、後ろに倒れてしまう危険が高まります。後ろに倒れると手をつくことができないぶん、前傾転倒よりも危険。2〜3cmのヒールがあり、かかとに芯材の入った靴のほうが後ろに倒れる危険は少なくなります。

今、人気のバレエシューズにもインソールを入れることをおすすめします。通常、靴には土踏まず部分のアーチを保つために靴に内蔵されたシャンクという鋼鉄のバネや、かかと部分に装着された芯材のカウンターなどが、歩行の安定の大きな支えとなっているのですが、多くのバレエシューズにはこれらが入っていません。

アーチを支えるこれらのサポートがなければ、アーチはつぶれやすくなり、外反母趾を誘発することも。私たちの足は100年を超える長い間の靴生活で、靴の支えがないと歩きづらいように"逆進化"してしまいました。

今、現代人の足にとっての地面とは、靴の中にあると言っても過言ではありません。足の形を即座に変えることはできませんが、地面(靴)を変えれば、現代人の弱った足でも快適に、かつ美しく歩くことができます。自分の足に合った地面(靴)をどうつくるか、そのためにインソールは欠かせないものなのです」

毎日必ず履いている靴なのに......、こんなにも知らないことばかりだったんですね。眠っていた靴たちも再び日の目を見ることができるかもしれません。足の仕組みを知り、美しく、快適な靴ライフを送りましょう。
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阿部 薫 新潟医療福祉大学 教授 博士 義肢装具士 (総合社会文化)大学院 義肢装具自立支援学分野長(博士/修士課程)、医療技術学部 義肢装具自立支援学科。靴医学、運動機能解剖学、歩行分析学、義肢装具学が専門。平成21年度より同大学大学院にて、日本で初めて靴とヒトの歩行の関係を科学的に研究する「靴人間科学」講座を担当している。靴の研究の第一人者として、日本だけでなく、世界各国の企業のアドバイザーや研究顧問を務める。「好きな靴を快適に履くため」のユーモアに富んだわかりやすい講義は、さまざまな年代層から熱い支持を集める。

イラスト/190

からだ用語辞典: 下腿三頭筋 / ウェッジソール

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