目からウロコの『正しい歩き方』解説!

特集/歩くチカラを見直そう

山口光國(理学療法士)
取材・文/大庭典子(ライター)

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朗報! 2,000~3,000歩で正しい歩行をからだが記憶する

「歩くとき、"次は右足を出そう"などと考える人はいませんね。みなさん無意識にからだが反応しているはずです。つまり歩行は"反射"運動なのです。たとえば、右足をケガした人が、1か月後にケガが治っても、右足を引きずった歩き方のまま、なんてことがあります。これは、からだが歩き方を覚えてしまったから起きること。

からだが歩き方を覚える基準は2,000~3,000歩と言われています。2,000~3,000歩連続で歩くとからだが記憶するんです。これはきれいな歩き方にも応用できるので、正しく2,000歩歩ければ、しめたもの。
一生、きれいな歩行が自分のものになるということなのです。ただ、"歩き方は反射運動"と申し上げたように、考え始めた途端わからなくなるのも歩行の特徴。歩き方を変える最初の2,000歩には、少々がんばりが必要かもしれません」
実際に先生のご指導のもと、歩き方を改善しようと考えながら歩いてみたところ、"あれ? 今までどうやって歩いていたんだっけ"というくらいぎこちなく、ロボットのような不自然な動きに。ここでめげずに、2,000歩の壁を乗り越えて、美しい歩行、新しい自分に出合いたいですね。

美しいウォーキングを身に着けるために意識すべきは、後ろ足!

自分がどんな歩き姿なのかを知ることが大事です。ショーウィンドウでも、家の鏡でも、自分の歩いている姿を客観的に見てみましょう。

■歩き始めは?
上のイラストのように、まっすぐ立ち、上半身を前傾姿勢に。前に傾く限界地点で足を出し歩き始める。

■肩は?
水平に保ち、左右に揺れないように。

■足は?
足を前に出そうという意識をなくす。歩くときは、後ろ足に意識を集中。後ろ足のかかとが地に着いていられるぎりぎりまで後ろ足を伸ばした状態をキープし、限界地点で力を抜き、膝を曲げる。同時に軸足移動。

■腰は?
後ろ足を伸ばしながらも腰は後ろに引かないよう、腰は前へ出していくイメージ。

■足の指先は?
後ろ足を伸ばしている間は、後ろ足のつま先は地面をつかんだ状態。
後ろ足の力を抜いたときには、地面をつかんだ指を伸ばす。

■目線は?
4~5m先に視線を向ける。

Image いかがでしょうか。実際に練習してみて、ふだん何気なく行っているウォーキングがこんなに難しかったとは! と歩行の奥深さを感じます。スローモーションで練習しながら、繰り返し、からだが覚えるよう積み重ねてください。

余談ですが、今回教えてくださった山口先生の歩き姿は、一度見たら忘れられないほどビューティフル! 思わず振り返って、後ろ姿にも魅入ってしまうほど魅了されてしまうのです。きれいな歩行がもたらす美の効果は、計り知れないものだとわかります。

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山口光國
(セラ・ラボ代表/理学療法士)
日本サッカーリーグの日立製作所(現 柏レイソルズ)にFWとして入団。故障から21歳で引退し、現職へ転身。昭和大学藤が丘リハビリテーション病院を経て、'05年より横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)にフィジカルコーチとして就任。現在はさまざまなジャンルのアスリートをサポートするほか、全国各地で講演、セミナー活動も行う。

イラスト/190