• Beauty
  • 2022.11.23

どうして冬になると肌が乾燥するの?

ボディの乾燥が気になる人へ 〜前編〜

どうして冬になると肌が乾燥するの?

木枯らしを連れた冬将軍の到来と共に、肌の乾きも深まっていく時季。顔の保湿には手をかけたくなる一方で、つい後回しになりがちなのがボディケア。タイツが引っかかるガサガサかかとや、粉吹きがちなひじ・ひざが気になりながらも、手間や時間もかけられない…。そんな私たちでも手軽に効率よくできる保湿ケアのコツやテクニックとは?

健やかな肌づくりのノウハウを知る皮ふ科専門医の松浦佳奈先生に、肌が乾燥するメカニズムを教えていただきました。

まずは、肌の乾燥メカニズムを知ることから

冬は乾燥の季節。その事実はわかっていても、カサカサ悩みが出てくるまでは気づきにくいのがボディの乾燥。「基本的に、肌の乾燥のメカニズムは顔もからだも同じです。健やかな肌では汗や皮脂からつくられる天然の潤いが皮ふのバリアとなって肌内部を守っていますが、冬は汗や皮脂の量が減るぶん、乾燥しやすくなる。これが第一の乾燥原因です」(松浦先生)

そんな肌のコンディションには、肌の構造も大きく関わっています。「スキンケアでよく『肌の角層』という言葉を耳にしませんか。角層は肌の一番外側にあり、レンガ塀のような構造をしています。レンガ(=角質細胞)の中には天然の保湿因子(NMF)が含まれていて、レンガのすき間を埋めるセメント部分(=細胞間脂質)はセラミド、コレステロール、脂肪酸などの潤いで満たされています。それでも乾燥が進んでしまうのは、肌のバリア機能が何らかの原因で壊れ、内側の潤いが蒸散してしまうためです」

肌は冬の環境に弱く、乾燥しやすい部位がある

肌は冬の環境に弱く、乾燥しやすい部位がある

バリア機能が壊れる最大の原因は、環境的要因による乾燥なのだそう。「冬は気温も湿度も低いうえに、暖房の効いた室内も乾燥ぎみ。着込んでいるから室内外の温度差で汗をかき、からだの角層がふやけてバリア機能を低下させてしまうことも」(松浦先生)。これは、マスクで肌荒れが起こる原理と同じ! 「腰まわりが乾燥する人は摩擦に注意して。よく動かすひじやひざなどの関節も、衣服がこすれやすく乾燥しがちです」

「一言でからだの皮ふと言っても、部位によって肌の厚みや脂っぽさ、乾燥レベルには差があります。皮脂を分泌する皮脂腺が多く存在している胸もとや背中は比較的脂っぽいのに対して、皮脂腺が少ないひざ下や足の裏はカサつきやすい傾向に。冷えなどによる血行不良が重なれば、症状がさらに深まることも少なくありません」

さらに冬は、肌を乾燥させる紫外線への警戒心もゆるみがち。「冷たい北風が角層から水分を奪うということもわかっています。からだの乾燥を防ぐには、防寒・防風対策をすることも大切。ただし、素材選びは慎重に。肌に直接触れるものは、シルクやオーガニックコットンなど刺激や摩擦の少ないものを選ぶと乾燥によるかゆみを抑えやすくなるはずです」

冬の入浴にひそむ乾燥トラップにも要注意

冬の入浴にひそむ乾燥トラップにも要注意

寒い季節、からだを芯からあたためたいバスタイムにも、思わぬ乾燥要因が。「ナイロン性のボディタオルやボディブラシで肌をゴシゴシこすったり、ボディソープを肌の上で泡立てたりすると、乾いた肌をさらに刺激し、乾燥を深める一因になります。正しい方法はとても簡単。ボディソープは皮脂を落としすぎてしまう恐れのある強い界面活性剤入りのものを避け、洗浄力がマイルドなアミノ酸系やカルボン酸系の界面活性剤や、皮ふへのダメージが少ない非イオン界面活性剤などを用いた商品を選びましょう。肌のpH値に近い弱酸性タイプを選ぶこともポイント。そしてしっかり泡立ててから、手で泡を転がすようにやさしく洗う。これだけで十分です」(松浦先生)

「寒い時季は入浴剤を使う人も多くなりますが、肌が乾燥しているときは、肌を刺激するような色つき、香りつき、発泡系のものを避け、無香料・無着色の保湿系入浴剤を選んでください。高温長時間の入浴はバリア機能を壊す一因になるので、入浴は38〜40℃くらいの湯温で、10〜15分ほどを目安にしましょう」

もう一つ肝心なのは、保湿のタイミング。顔なら洗顔後すぐに、というのが乾燥対策の鉄則とされていますが…。「近年の研究によれば、お風呂上がり直後にあわててボディの保湿をしなくても、入浴後のほてりが鎮まる15〜20分くらいのうちにゆっくりケアすれば、保湿効果に大きな差はないということがわかっています」

「乾燥対策の保湿ケアでは、他にも大切なことがあるんです」と松浦先生。後編は11月30日(水)公開予定。「成分で読み解く、乾燥ケアアイテムの選び方」をご紹介します。

  • 松浦佳奈(まつうらかな)
  • 松浦佳奈(まつうらかな) 自由が丘クリニック 皮ふ科部長
    聖マリアンナ医科大学病院 皮ふ科医長を経て、2020年より現職に。シミやホクロ、ニキビなど、あらゆる肌の悩みに精通し、一人一人に寄り添った最適な治療や施術、スキンケアのアドバイスにも定評のある名医。美容成分にも明るく、症状に合わせて化粧水やクリームを調合するなど、ドクターズコスメの開発も手がける。
取材・文/田中あか音
イラスト/naohiga
構成/江尻千穂
デザイン/WATARIGRAPHIC