コスパも時短も極めた今、生活者が求める「気もパ」とは?

語り/秋山リエコ(『オレンジページ』編集長)

時間やお金などどんなことを大事にして日々の生活を送るかは、時代とともに変化します。その価値観に今、大きな変化が起きていると話すのは、雑誌『オレンジページ』の編集長を務める秋山リエコさん。長年その時代の女性を主役に、暮らしに寄り添ってきた『オレンジページ』が捉えている、その変化の波とは? 豊かな生活の本質について考えていきます。

コスパも時短も極めた今、生活者が求める「気もパ」とは?

1985年に創刊された『オレンジページ』は、日本が成長してきた時代を女性たちと一緒に歩んできましたが、バブル絶頂期から現在までを見てみると、女性たちが暮らしの中で大切にしていること、求めている情報は刻々と変化をしているのがわかります。

オレンジページ

たとえばお料理ひとつ取っても、創刊のころに反響の大きかったレシピは、「4人分のおかずがたった1000円!」などコスパ重視のもの。それが少しずつ変化して、次に求められたのは「効率のよさ」。「30分でできるおかず」などの見出しが多く並びました。ひょっとして今、「時短と言いながら30分もかかるの?!」と思いました? 現代の感覚だと信じがたいですが、女性が時間をかけて料理をすることが美徳とされた時代に、30分の時短レシピはとてもセンセーショナルだったんですね。そこからさらに進んで現代では「5分で1品、15分で3品の献立完成!」ぐらいの強いインパクトのあるレシピが求められています。

ただ、そうやって効率もコスパも追求するところまで追求しきった感のある今、読者と話をしたり、アンケートの声を読んでいると、生活者が求めていることにある変化が起きていると感じます。それは時間やお金のムダを省くことだけを大事にするのではなく、「気持ちがアガる」ことも重要視する人が増えているということ。単に最短! 最安! なら何でもいいわけではなく、コスパや効率は依然"据え置き"とした上で、私たちの意識は人間が本能で知っている「気持ちよさ」に戻ってきたのです。

『オレンジページ』ではこの変化の波を受けて、現代の生活者が求めるキーワードは、「気もパ」(気持ちがアガるパフォーマンスの略)」だと考えました。さらに詳しく見ていくと、「気もパ」を満たすコトやモノには、共通して3つのKがあることが浮かび上がってきたのです。

豊かに暮らすためのキーワード「3K」

「気もパ」を考えるうえで大事な3つのKは、「解放感」と「"交"福感」、「高揚感」。「解放感」は、〜しなければならないといった縛りから自分を解放すること。掃除を例に考えると、忙しい中、時間をかけて家の隅々まで完璧にキレイにするのは無理。それならば自分のペースで空いた時間を利用して、少しのスペースだけやろうなど、自分なりのやり方で実践する人が増えています。手軽にささっと動かせるスティックタイプの掃除機がヒットしていることもその表れでしょう。

豊かに暮らすためのキーワード「3K」

ふたつめは「"交"福感」。これは私たちがつくった造語なのですが、心が交わることに幸福を感じること。料理をするにも、買ってきたお惣菜で終わりではなく、そこに心の交流も欲しい。素材をカットして鍋にセットする簡単な準備はしつつ、帰宅したら火をつけるだけなど、ラクだけど自分もちゃんと料理に関与し、しかも出したときに家族に喜ばれ、さらに鍋を囲み楽しい団らんの時間がもてる。そんな風に「褒められて私がうれしい」「家族が笑顔でうれしい」と、心が交わることに幸せを感じる「交福感」です。ビールサーバーやおしゃれなたこ焼き機などのパーティー家電のヒットにも、心が交わる幸せが求められていると感じます。

そして3つ目は「高揚感」のK。食でいうと最近は、やわらかい食パンやケーキなどの"もちもち"の食感が再注目されています。これまで体験したことのない新しい食感ではなく、もともと皆が大好きだったものに再び立ち返っている傾向がここでも見られるのです。食パンを外は"カリっ"と、中は"もちもち"に焼けるトースターが今大人気なのも、パンという日常的な食べ物に、時間やお金をかけることに高揚感を感じたり贅沢だと思う人が増えている証でしょう。

食感も下着も、もちもちが人気

食感も下着も、もちもちが人気
オレンジページ2020年1月17日号より抜粋

さて、こういった3Kに価値を感じる感性は、衣食住すべてに関係していると思っています。"もちもち"とした感覚は、食感だけでなく、今下着や部屋着など身に着けるものとしても女性から人気です。

やわらかい素材の下着は、もちもちとしたものにからだが包まれる高揚感や、からだを締め付けない解放感など、「気もパ」の要素も満載。研究でも明らかにされていますが、もちもちとした触感は気持ちを癒したり、心を落ち着かせる作用があるそう。きっと人間に組み込まれた本能的なここちよさなのでしょうね。そう考えると、下着や衣類の購買理由にも「気もパ」が深く関わっていると思います。

多様化の進んだ現代、ひとりの女性の中にもさまざまな価値観があります。平日は、テクノロジーを利用してムダを省きタスクのように家事をこなす一方、週末はたっぷりと時間をかけてジャムをコトコト煮るような...。両サイドを知る、バランスのいい女性が今という時代にマッチし、輝いているのではないでしょうか。そして、きっとそんな女性のそばには数々の「気もパ」アイテムがあって、それらを自分らしく使いながら、毎日を楽しんでいるのだと思います。

  • 秋山リエコ
  • 秋山リエコ 『オレンジページ』編集長。2000年、株式会社オレンジページ入社。料理テーマを中心に編集制作に携わる。人気料理家の初のプライベートレシピ集となる『藤井恵 わたしの家庭料理』や、累計52万部突破の「帰ってから作れる」シリーズの立ち上げなどを手がけ、2017年より料理専門誌『オレンジページ Cooking』(季刊)編集長を務める。2019年より現職。
取材・文/大庭典子

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