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カラダやシタギのコトバ 新解釈・連想・妄想コラム

新訳からだ辞典「パンツ一丁」

2018年1月31日

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

HEART

今月のコトバ「肉」

今月のコトバ「肉」
肉ブームはどこから?
世の中はいま、肉ブームである。一昨年末は、小池都知事が立ち食いステーキを頬張る姿がツイッターで広まり、昨年末は、安倍首相が芸能人らと焼肉店で会食したことがニュースになった。私のまわりでも、昨年は焼肉店で開かれる忘年会が多かったと聞くし、私自身が食べる肉の量も増えた。近所に焼肉食べ放題の店がオープンしたからだ。

肉ブームの理由を何となくずっと考えていたが、昨年も終わりに近づいたころ、ようやく「平成29年!」と気がついた。毎月29日になると「肉の日!」と必ず思い出すのに、年号は意外な盲点であった。毎日が肉の日であったはずの平成29年が、なんとも名残惜しい今日このごろである。

最近は、糖質オフのブームで肉の地位が上がり、ダイエットしている人も肉を積極的に食べるようになった。めまいや貧血との戦いだった過酷なダイエットに比べると、肉を食べてもいいなんて夢みたい。美しいスタイルをキープしている女優の夏木マリさんは「歌うときは牛肉、踊るときは鶏肉、疲れたときは豚肉を食べる」と朝日新聞のインタビューで言っていた。美容液のように肉を使い分ける感覚が、なんとも楽しそうではないか。
肉のパワーを信じたい
思えば私も年々、肉に対してより具体的な機能を求め、効果を確認するようになってきた。スタミナ不足のときに肉を食べるのはもちろん、仕事がうまくいったり、思いのほか元気に活動できたようなとき、直近に食べた肉を思い出し、「あの肉のおかげかも」と感謝してしまうのだ。

肉は、わかりやすくパワーに変換されるイメージから、信仰の対象になりやすいのだろうか。「ニク!ニク!」と何かに憑かれたように肉を求める肉好きを時々見かけるが、魚好きは、もう少し冷静に魚を愛しているような気がする。「ニク!」という端的な叫びの前では「サカナもいいよねえ」という上品なつぶやきは、かき消されてしまうだろう。どうしても魚が食べたいときは「スシ!」と2文字でやり返すしかない。

肉は食べ過ぎてもいけないと思うが、適切な肉の摂取量が「一食あたり手の平1枚分の量が目安」と聞いたときは、そんなに食べていいのかと驚いた。私は、指を含めた全体の手のサイズ(しかもかなり厚め!)を想像したからだ。ただし、辞書で「手の平」の意味を調べると「手首から指の付け根までの、手を握ったときに内側になる面」と書いてある。少なくとも、手の上にラクに乗る大きさと厚さの肉を想定すべきなのだろう。
贅肉のコピーライティング
肉という言葉は、食べ物としての動物の肉を指すだけでなく「人のからだ」の意味もある。精神に対しての肉体というわけだが、たとえば「贅肉」なども、ほぼ人間限定で使われる言葉といっていい。贅沢な肉、ゴージャスな肉と言い換えれば聞こえはいいが、その意味するところは「運動不足や栄養過剰などのために必要以上についたからだの脂肪や肉」であり、ポジティブなニュアンスはない。

女性の美しいからだを表現する場合に、贅肉という美しくない言葉はなるべく使いたくないなと思う。たとえ、そこに贅肉があったとしても、だ。プチ贅沢に習って「プチ贅肉」くらいなら、許容範囲かもしれない。個人的に好きなのは「はみ肉」という言い方で、聞くたびに、ちょっと可愛いなとほっこりする。

「やわらかい肉質」という表現も悪くない。年齢とともに、女性のからだはやわらかい肉質になっていくという。「たるむ」や「たれる」はバッドイメージだが、やわらかい肉質に進化するのなら、加齢も悪くない。もう一歩盛って「とろけるようにやわらかで芳醇な肉質」くらいのハッタリをかましてみたいところだが、やや食べ物っぽくなってしまいますね。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ワイン、イタリア、ランジェリー、映画愛好家。
好きなネット用語は「パンくずリスト」。自分が今どこにいるのかを示す階層表示のことだが、ヘンゼルとグレーテルが森で迷子にならないよう通り道にパンくずを置いていったエピソードに由来すると知り、キュンとした。

※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
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