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インサイドストーリー

商品づくりの現場から

2015年8月19日

語り/徳光奈美子(ワコール人間科学研究所)

BODY

リピーター続出! 大ヒット「ナイトアップブラ」開発秘話

「寝るとき用のブラ?」...あまり聞き慣れない、その商品の誕生は大きな話題となりました。それから11年、「ナイトアップブラ」は、2015年に3代目となる商品が発売。どのように生まれどんな苦労があったのか、初代から開発を担当しているワコール人間科学研究所の徳光奈美子に聞きました。 ナイトアップブラ
ブラジャーをつけたまま寝る人が3割も!?
――初代「ナイトアップブラ」の誕生が2004年。最初に「寝るとき用ブラジャー」という言葉を聞いたときは、正直なところ、どんなブラなのか想像できませんでした。

徳光
 そうですよね。今でこそナイトアップブラは定着してきていますが、当時は、寝ているときのバストに着目したブラは、珍しかったと思います。

――なぜ、寝ているとき用のブラを開発しようと考えたのでしょうか?

徳光
 そもそもは、ワコール内で「睡眠科学」というブランドがスタートしたことがきっかけです。「寝ているときのからだは、起きている日中とは、動きも生理的にもまったく違う働きをしていること」をきちんと研究して、それに基づいたナイトウェアをつくっていこうと始まったブランドです。立ち上げに際し、さまざまな調査を行ったところ、寝ているときにブラジャーをしている人が3割もいることがわかったのです。

――3割も...! 思ったよりも多いですね。

徳光
 私たちも驚きました。「バストの形が崩れそうだから」という理由が圧倒的に多くあがりましたが、よくよく聞いてみると「ワイヤーが当たって痛い」「しめつけられていて窮屈に感じている」など、快適さを感じていない人がたくさんいることもわかったのです。3割も着用している人がいて、なおかつ、ブラは付けているけれど不満がある人が多い、これはチャレンジする価値のある大きな可能性、需要があると思い、開発が始まりました。

――まず、どんなことをしたのですか?

徳光
 最初に専門家の先生方に意見を伺いました。これが...大反対を受けました。「からだをしめつけると、睡眠に悪影響を及ぼすという研究結果もありますよ」と。ですが、このことで逆に取り組むべきテーマがはっきりしたのです。「睡眠を阻害しないような、からだをしめつけずにバストが安定するもの」をつくろう、と。そこで発見したのが、"360度すそ野サポート"なんです!

――寝ているときのバストは、起きているときとどう違うのでしょうか?

徳光
 私たちもまずそこを知る事から始めました。フィッティングルームに、布団を敷いてモニターさんに寝てもらい、研究員も床にはいつくばって(笑)、その形や重力のかかり方、いろいろな寝方をした時にバストがどう変形しているのか、毎日毎日徹底的に調査をしました。すると、寝ているときと起きているときでは、バストへの力のかかり方が、まったく違うことがわかったのです。

――寝ているときは...、バストが流れてしまっているな、ということくらいしかわからないです。

徳光
 そうですよね。日中、起きているときのバストは、上から下に向かって力がかかっていますが、仰向けで寝ているときは、下へ、横へ、さらに上へも力がかかっています。 寝ているときのバストの状態 しかも、起きているときのブラジャーには、バストを美しく整える役割もありますから、こぼれるバストを横からすくい、下から支え、美しく造形しています。ですが、同じものを寝ているときにも着けていたら...、上へ押し上げる力がかかりすぎてしまいます。

――寝ているときは、バストの全方向に重力がかかっているのですね。

徳光
 私たちが開発したナイトアップブラの構造をひと言で表現するなら、"360度すそ野サポート"です。

これは、バストをひとつの小山だと仮定して考えたときに、底辺をぐるりと囲んだ裾野部分をサポートする構造のこと。バストを包み込むように、面の力で支えています。

――なるほど。重力がかかる矢印を逆方向から支えているのですね。

徳光
 しかも、ただ支えるだけでなく、「支えているけれど、しめつけない」ということにも、注力しました。モニターさんに寝てもらい、どのくらいの力加減なら押されても苦しくないか、痛くないかを探っていきました。ですが、そのことばかりに気を配っていると、今度は力がゆるすぎてサポートできなくなるので、ちょうどいい「ここだ」というポイントを導き出すまで、何度も実験を重ねました。生地は縦にも横にもよく伸びるものを使用し、ゴムもいちばんパワー感の優しいものにするなど、当然、着用感にもこだわっています。 2004年発売の「ナイトアップブラ」 2004年発売の「ナイトアップブラ」
お客さまの声を反映し、満を持して3代目が誕生!
ワコールナイトアップブラ(カラー5種類) 2015年発売のワコールナイトアップブラ(カラー5種類)各¥4,200~+税 ――2015年には、3代目となる「ナイトアップブラ」が誕生しましたね。初代との違いは何でしょうか。

徳光
 まず初代と2代目の違いは、バストが大きいL、LLサイズに対して、構造を改良した点です。というのも、バストの大きい方は、仰向だけでなく、横向きになったときに、形が大きく変形しますので、そこを支える構造をプラスしました。"360度すそ野サポート"は守りつつ、Xのラインをプラスし、横向きになったときにもしっかり支えているのが、2代目のL、LLサイズの特徴です。

3代目の特徴は、"360度すそ野サポート"を踏襲しつつ、バストの安定感が増す構造に改良し、さらにやわらかい生地を採用する事で優しい着けごこちもちゃんと維持できています。お客さまから「乳頭が透けるのが気になる」という声を多くいただいていたので、乳頭部分の生地を二重にし、透けない工夫も加えました。 3代目「ナイトアップブラ」の内側 3代目「ナイトアップブラ」の内側。さまざまなボリュームのバストにフィットするように工夫されている。 ――最初に反対されていた先生は、完成した「ナイトアップブラ」を見てどのような反応をされていましたか?

徳光
 先生には、共同研究の形で検証実験を一緒に行ってもらい、「これなら大丈夫だね」と太鼓判をいただきました。

――そうですか! これまで、寝るときは外していた人のなかにも「ナイトアップブラ」を知って、着ける習慣ができたという話も聞いています。今後も広まっていくといいですね。

徳光
 はい。店頭やアンケートでそういった声を聞くと、こんなにうれしいことはなく、開発してよかった、と心から思います。

徳光奈美子

徳光奈美子(ワコール人間科学研究所) ワコール入社後、人間科学研究所にてブラジャーの着用感評価から着ごこちに関する研究を担当。その後ナイトウェアブランド「睡眠科学」「ナイトアップブラ」など、主に睡眠研究をベースにした商品開発に従事。アンケートやインタビューからニーズを調査し、所内で開発する商品のコンセプトメイクにも携わっている。繊維製品品質管理士。

取材・文/大庭典子(ライター)
人物撮影/平賀 源

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