これまでにない「華やかさ」で勝負する、日本の夏を表現した「夏めくブラ」

語り/田中裕也(MD)、横山有以(デザイナー)、扇山朱美(パタンナー)

満を持して発売する4年ぶりの「夏ブラ」。これまでより「造形性」と「デザイン性」に着目し向上させ、夏の暑さに対応した商品が完成しました。ミッションクリアに至る制作の裏側に迫ります。

これまでにない“華やかさ”で勝負する、日本の夏を表現した「夏めくブラ」

機能性と美しいデザインが共存する
見る者の目を奪う優美さで勝負!

――4年ぶりの発売となる夏ブラは、絶妙な透け感がとても涼しそうな印象を受けました。

横山 ジャパニーズサマーをテーマに、繊細かつ美しいレースをふんだんに使って華やかで涼しげな見た目に仕上げました。

田中 色味や風合いも、日本の夏をイメージして、奥ゆかしい感じになっていると思います。

左から、田中裕也(MD)、横山有以(デザイナー)、扇山朱美(パタンナー)。 左から、田中裕也(MD)、横山有以(デザイナー)、扇山朱美(パタンナー) 前中心のチュールは、着物の半衿からヒントをもらいました。さり気ない和のエッセンスを感じてみてください。

横山 前中心のチュールは、着物の半衿からヒントをもらいました。さり気ない和のエッセンスを感じてみてください。

扇山 チュールの下に小さなチャームが付いているのもポイントです。

――ひと目見ただけでテンションが上がるデザインですね!

横山 夏椿や芍薬といった夏を連想させる花々を描き、花手水(はなちょうず)みたいな雰囲気を出したかったんです。水に浮かび上がるような花色のグラデーションを重ね、また刺繍糸にはラメ糸を用いてキラキラと水の中で反射している様を表現しました。新生活にもふさわしい、晴れやかな気分にしてくれる夏ブラです。

濃淡のグラデーションが奥ゆきを生み、透明感を最大限に表現 濃淡のグラデーションが奥ゆきを生み、透明感を最大限に表現

合言葉は、“とことん夏を楽しむ”
今一度、ワコールらしい商品を!

田中 正直、4年前に発売した夏ブラは思うような成果が出ず、悔しい思いをしました。だからこそ、「今回は闘いたい!」とチーム一丸となって開発に取り組んだんです。夏ブラに対する不快感を解決するため、他社にあるけどワコールにない要素をあぶり出すところから始めました。

田中裕也(MD)

横山 夏ブラへのお客さまのご要望は、大きく3つ。まずは、デザイン性。次に、造形性。そして、夏素材による軽やかで涼しい着けごこちです。ところが、機能性を追い求めるとほかとのバランスが難しく…。それらをすべて叶えるためには、新素材を採用する必要がありました。またサイズ別設計を取り入れたのも大きなポイントです。

サイズに合わせたカップシルエットを実現。<Aカップ、(B~D)65~75サイズ>はパッド入りで立体感のある谷間メイク シルエット。<(B)80サイズ、(C・D)80・85サイズ、(E・F)カップ>はパッドなしで突出感をおさえすっきりコンパクトシルエット。サイズによってカップの造形、パットの有無も異なる。 サイズに合わせたカップシルエットを実現。<Aカップ、(B~D)65~75サイズ>はパッド入りで立体感のある谷間メイク シルエット。<(B)80サイズ、(C・D)80・85サイズ、(E・F)カップ>はパッドなしで突出感をおさえすっきりコンパクトシルエット。サイズによってカップの造形、パットの有無も異なる。

扇山 そもそも、夏の素材はバストメイクしにくいんです。けれど、そこは下着メーカーとしての矜持といいますか…、やっぱりバストメイクはしっかりしたい! という想いがありました。ひと口にバストメイクといっても、サイズによってスタイルアップは異なります。大きく見せたい方もいれば、小さく見えることを望む方もいる。サイズ別の美しいスタイルをサポートするために、造形性には頭を悩ませました。今回の夏ブラが、これまでの中でいちばん苦労したかもしれません(苦笑)。

レースの表情を確かめるための試作品。「生地だけのときと比べて、実際にカタチになっていると見え方も変わります」と、扇山さん レースの表情を確かめるための試作品。「生地だけのときと比べて、実際にカタチになっていると見え方も変わります」と、扇山さん

横山 今回のパターンは本当に大変だったと思います。デザインも大変だったんですけど(笑)。でも、少しずつカタチになっていくのを間近で見るのはものづくりの醍醐味のひとつですし、商品の向こう側にいる「お客さまの日常を豊かにしたい」というワコールの流儀が詰まったアイテムを生み出せたと思います。

ビジュアル重視でも、快適さをあきらめない!
「夏めくブラ」の名にふさわしい新素材

――見た目だけでなく、随所にこだわりがあるのですね。

扇山 脇がスッキリとするためには、しっかりホールドして谷間ができていてもこぼれる不安がないよう密着度を上げる工夫をしたり、突出をおさえて谷間感をキープしつつ、ほどよい小ささになるためにはどうすればいいか、を試行錯誤したり。

横山 弊社には環境実験室という空間があって、真夏を体感しながらものづくりを行ってきました。だからこそ、ベタつきやムレ感をとことんなくしたい! という実感が得られたのかもしれません。

扇山 歩くと風を感じるような軽さで、サラサラ感やドライ感を大切にしています。本当に、ずっと苦労の連続でした。

――先ほど話してくださった新素材の開発についてお聞かせください。

田中 吸汗・速乾に優れた素材を開発し、その生地を汗だまりの箇所に配して、発汗による不快感を軽減させました。また、ワイヤーループにベタつきにくい吸汗速乾素材を使用することで、カップ内の快適さが向上しています。

肌側カップサイドとパット受けは吸汗速乾性にすぐれたドライタッチ素材でサラリ爽快 肌側カップサイドとパット受けは吸汗速乾性にすぐれたドライタッチ素材でサラリ爽快

横山 生地の凹凸のドライタッチ素材によってもさらっとした爽快さを実現できているので、夏ブラの最大の課題である不快さを軽減してくれているのもポイントです。内側を見るだけで「なんかすごいやってくれそう!」感、ありませんか?! チーム全員が納得のいく仕上がりとなった「夏めくブラ」の快適さとかわいらしさを、ぜひ体感してほしいです。

扇山 セットアップのショーツは、色柄ごとに3パターンご用意しています。この夏、さらっと快適に、お客さまの生活を少しでも豊かにすることができたら、うれしいです。

セットアップのショーツは、色柄ごとに3パターンご用意しています。
  • 田中裕也
  • 田中裕也(MD) 商品本部 ワコール・ウイング商品統括部 ワコールブランド商品部 商品営業一課
    2009年入社。販売・販売企画・総合企画室を経て「顧客視点でのマーケティング」を学び、2020年からWB商品部へ。
    ラゼMDでは「アドマイヤーブラ」、2021年4月より担当するトップMDでは「重力に負けないバストケアブラ ノンワイヤー」「ハグするブラ」で世の女性に貢献中。
  • 横山有以(デザイナー)
  • 横山有以(デザイナー) 商品本部 ワコール・ウイング商品統括部 ワコールブランド商品部 商品企画課 課長
    2007年入社。ブラジャーのパタンナーを経て、デザイナーに転身。さまざまなブランドを担当後、2020AWからはキャンペーンのチーフとして、「ナイトアップブラ」「重力に負けないバストケアブラ ノンワイヤー」「ハグするブラ」を開発し、世の女性に貢献中。2024年4月より現職。
  • 扇山朱美(パタンナー)
  • 扇山朱美(パタンナー) 商品本部 商品設計部 設計一課
    2002年入社。ブラジャーのパタンナーを経て、開発担当になりさまざまな機能性商品を開発。2022AWからはキャンペーンのチーフパタンナーとして「重力に負けないバストケアブラ ノンワイヤー」「ハグするブラ」を開発し、世の女性に貢献中。
取材・文/椿屋
撮影/石川奈都子
デザイン/WATARIGRAPHIC